終活について…①遺言
遺言書の種類
遺言とは、ご存じ被相続人の最終の意思表示のことですがなにも死に間際にしたものである必要は全くありません。
遺言事項には大きく分けて「相続すること」「財産の処分に関すること」「身分に関すること」の3種類があり、例としては、誰にどのくらい何を相続させるであったりとか、相続人の廃除やその取消し、財産の遺贈や子供の認知などさまざまです。
遺言を用いることで、自ら築いた財産をある程度意思に沿ったかたちで遺された家族に相続させることができるのです。
しかし遺言といっても口頭で伝えるだけでは効力は薄く、やはり作成は書面に残すことが必須となってきます。以下に遺言書の書き方、種類、保管方法などについて記しておきます。
自筆証書遺言
まずひとつが「自筆証書遺言」といわれる遺言の方法です。書き方は遺言者本人が、遺言の全文・日付・氏名を自書し、押印するといったものです。
必要なものは筆記用具と用紙のみで作成することができ、いつでも作成可能です。後で出てくる方式と比べて費用も掛からず、一番簡単かと思います。
また、作成にあたって一人で可能なので遺言内容を誰にも見られずに書くことができます。全部秘密にしておけるということです。
しかし、家庭裁判所の検認というものが必要であるということ、要件を満たさず無効となるケースも多々あります。
さらに、紛失、偽造の心配や発見すらされないケースも多々あります。これに関しては自筆証書遺言保管制度が誕生し公証役場での保管制度というものもできました。
(自筆証書遺言) 第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。 2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。 3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。 ※引用元:e-Gov法令検索
こんな自筆証書遺言は無効??
- 押印がない
- 日付の記載がない、もしくは吉日
- 遺言者本人が書いていない
- 自筆ではない(パソコン等で書いた)
- 声を録音した遺言
- 遺言者の署名がない、または他人の署名
- 相続する財産が不明確
- 夫婦で書いた、など二人以上で書いた
- 遺言作成日ではない不明の日付で書いた
公正証書遺言
公正証書遺言というのは、公証人に作成してもらいかつ、原本を公証役場で保管してもらうといった方式の遺言書です。
作成・保管ともに専門家である公証人が責任もってやってくれるので、無効になったりする危険性は低く、法的に最も安全・確実で、相続人間の紛争防止に最も適しているのではないでしょうか。
公証役場にて、二人以上の証人の立ち合いのもと公証人に作成してもらう方式で、原本が公証役場に保管され自筆証書遺言よりもかなり安全で確実な遺言書の方式です。
公証役場がはいるため家庭裁判所の検認は不要ですが、その分費用がかかること、内容が自分だけのものとして秘密にできないといったデメリットはあります。
公正証書遺言の作成の流れ
- 遺言者が内容を考えてあらかじめメモをとっておく(公証人と作成しても可)
- 考えておいた内容を公証人に伝えて原案を確認・検討する
- 必要書類を用意して公証役場へ届ける
- 遺言作成時に立ち会ってもらう証人二人を選任する
- 遺言者・立ち会ってもらう証人二人・公証人で公証役場に行く日を決める
- その日に遺言者・証人二人で公証役場へ出向く
- 公正証書遺言の内容を確認したら、遺言者・証人二人・公証人で署名、押印する
作成にかかる日数は2、3週間から1か月くらいはかかる
この公正証書遺言は無効
- そもそも立ち会ってもらう証人になることができない人物が立ち会った
- 公証人が席を外している間に作成された
- 公証人に口述せず、ジェスチャーで伝えてしまい作成された
- 立ち会ってもらう証人1人で作成された
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、遺言者が記載し、自筆・押印した上で封印し、さらに公証役場に持ち込んだ上で公証人および証人の立ち合いの下で保管を依頼します。
公正証書遺言と違い、作成は遺言者が自ら行う点が特徴です。
秘密証書遺言のメリットとは
遺言内容を秘密にでき、偽造・隠匿の防止にもなります。
さらに遺言書の存在を遺族に明らかにできることで自筆証書遺言のときにデメリットであった、発見されないまま時が過ぎるといったリスクはなくなるというメリットがあります。
しかし、自筆証書遺言と同様に遺言内容や書き方等について専門家のチェックを受けるわけではないので、遺言者の気づかぬうちに無効となる危険性も少なからずあります。